検証概要
基本的に街路灯のポールは、風速60m/sの風でも耐えれるように設計されてます。FRPシップ工法による補強は、この設計基準を超え、街路灯新設以上の強度を保たせることができます。以下、FRPシップ工法による補強を行ったポールで実際に曲げ試験を行い、破壊荷重を計測し、検証を行っています。
実験結果
地際曲げ強度試験結果は、以下のとおりです。
設計荷重の約1.6倍の補強効果、無補強鋼管の約18倍の強度が確認できました。
実験詳細は、以下のとおりです。
地際曲げ強度試験
この試験は, 実大曲げ強度試験後に実施する。試験体は 実大強度試験で使用した YSポール街路灯の上部管を切断し、地際部を中心として⾧さ2.0mの試験体を製作する。曲げ試験は,大阪産業大学の梁専用曲げ試験機(200t)を使用し, 中央点載荷法による3点曲げ試験方法で試験体の降伏点を最大荷重として、破壊荷重を計測し,検証を行う。
地際曲げ強度試験の詳細
強度試験は4種類の試供材で行った。
No,0 実大照明柱の無補強の引張側地際部を60%(損傷度合)切断して、梁専用曲げ試験機に固定する。
No,30-1 実大照明柱の引張側地際部を30%(損傷度合)切断して、地際を中心に1.0mの補強を施した供試体を試験台に固定する。
No,60-2 実大照明柱の引張側地際部を60%(損傷度合)切断して、地際を中心に1.0mの補強を施した供試体を試験台に固定する。
No,60-3 実大照明柱の圧縮側地際部を60%(損傷度合)切断して、地際を中心に1.0mの補強を施した供試体を試験台に固定する。
各試供材の曲げ試験は「JIS A 1106:1999 」中央点載荷法による3点曲げ試験方法で鋼管の降伏点を最大荷重として、破壊荷重を測定する。また、降伏点は、荷重をかけても変形はするが、荷重が上がらない時点とし、最大変位が50㎜に到着した時点で試験を終了する。
地際曲げ強度試験の結果記録
供試材№ | 地際部損傷度合 | 損傷部 | 破壊荷重試験 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
破壊荷重 | 降伏点変位 | 破壊の状況 | ||||
(kg) | (N) | (mm) | ||||
№ 0 | 60% | 引張側 | 400 | 3,922 | 21 | 引張側の損傷部が拡大して座屈 |
№ 30-1 | 30% | 引張側 | 6,800 | 66,685 | 22 | |
№ 60-2 | 60% | 引張側 | 9,100 | 89,240 | 28 | |
№ 60-3 | 60% | 圧縮側 | 6,200 | 60,801 | 24 | 圧縮側の損傷部が縮小して座屈 |
FRPシップ工法の強度検証
実際の照明灯の構造計算を行い、実験結果との比較を行います。
照明用ポールの強度計算式(JIL)
速度圧 (q)=1/2×空気密度(ρ)×V2
風圧力 (P) =風力係数(C)×速度圧 (q)×受圧面積(A)
曲げモーメント(M)=風圧力 (P)×風圧中心高さ(h)
(JIL1003:2009より引用)
ア)風力係数
名称 | 記号 | 形状 | 風力係数 |
照明器具の風力係数 | C1 | ハイウェイ型 | 0.7 |
ポールの風力係数 | Cp | 丸形断面 | 0.7 |
※「照明用ポール強度計算基準 JIL 1003:2009」より
イ)照明器具の受圧面積
形式 | 記号 | 照明器具の受圧面積 |
KSC-7 | A | 0.25m2 |
※「道路・トンネル照明機材仕様書 2008年度版」より
ウ)照明器具の風荷重
P0=c1・q・A = 0.7×2214×0.25 = 387.5 N
エ)ポール曲線部に作用する風荷重
P = c1・q・Lr・(D3+D2)/2
=0.7×2214×3.200×(0.075+0.093)/2
= 416.5 N
地際部の曲げモーメント
M:ポールにかかる風荷重により地際部に生じる曲げモーメント
M = K+2・Po・h1+2・P・(h2+(h1-h2)・2/3)
= 4319+2×387.5×8.000+2×416.5×(6.929+(8.000-6.929)×2/3)
= 16885(N・m)
K:ポールの直線部にかかる風荷重により地際部に生じる曲げモーメント算式
K=1/2・Cp・q(1/3・α・h23+D2・h22)
=1/2×0.7×2214×(1/3×1/100×6.9293+0.093×6.9292)
= 4319(N・m)
地際曲げ強度試験結果に於ける設計荷重との比較(表-3)
供試材№ | 仕 様 | 地際部損傷度合 | 損傷部 | 地際部曲げ試験測定値 | 比較値 | |
---|---|---|---|---|---|---|
破壊荷重 | モーメント | |||||
P | M | M-Ma | ||||
(N) | (N・m) | (N・m) | ||||
№ 0 | 無補強 | 60% | 引張側 | 3,922 | 1,471 | ‐15,414 |
№ 30-1 | 補強有 | 30% | 引張側 | 66,685 | 25,006 | 8,121 |
№ 60-2 | 補強有 | 60% | 引張側 | 89,240 | 33,465 | 16,580 |
№ 60-3 | 補強有 | 60% | 圧縮側 | 60,801 | 22,800 | 5,915 |
設計風速60m/s地際部の曲げモーメント Ma=16,885(N・m)
地際曲げ強度試験結果の考察
上記の表-3は、地際曲げ強度試験結果に於ける設計荷重との比較である。地際での設計風速 60m/s時の曲げモーメントの比較(M-Ma)では、№ 0 の無補強は設計荷重に達しないが、補強有り3本の平均値(M)27,090(N・m)では、設計荷重の約1.6倍の補強効果が確認された。また、破壊荷重(P)の比較では№ 0 の無補強と補強有り3本の平均値との差は、無補強の約18倍の強度が確認された。